中級者向けの練習曲とは?
今回の記事では、中級者におすすめの練習曲集と、その使い方について解説します。

この時期には、必ず全調で音階とアルペジオ練習をしましょう!
私のおすすめはこの3冊です!
(リンクをクリックすると、各練習曲の説明にジャンプします)
【中級者】どのくらいのレベル?
練習曲の解説の前に、「中級者」の目安を説明しておきます。
あくまでも主観的なものになってしまいますが、長い講師経験から「このくらいできれば中級者かな」と感じる部分を書きました。
演奏技術だけではなく、音楽の総合的な力も考慮しています。
- ト音記号、ヘ音記号どちらで書かれていても、同じレベルで読譜ができる。両手でハ長調のほか3~4種類の音階(スケール)は常に弾ける。
- バイエルなど、初歩の教則なら初見で演奏できる。
- J.S.バッハのインヴェンション・シンフォニア、古典派のソナチネ・小規模のソナタ、ロマン派の小品などを練習している。
3については、たくさんある作品をここで挙げることは無理なので、今練習している(または、かつて勉強した)曲の難易度を参考にしてください。全音出版や音楽之友社の楽譜の最後に、グレード別出版目録が掲載されているので、参考にすると良いでしょう。
ただ、人によって得意なこと・苦手なことは違いますし、曲の難易度というのは絶対的なものではありません。あくまでも、参考程度に…。
私は、3より1、2のほうが練習曲を選ぶうえでは大切なポイントだと思っています。
音階の理解と初見力は、音楽の総合力を測るわかりやすい基準となります。上のリストは中級の入口で、上級に入るころには、全調弾けることを目標にしましょう!
1と2がむずかしい方は、まず初級向けの練習曲で、基礎固めを!
こちらの記事を参考にしてください。
「身体訓練特化型」の練習曲を取り入れよう!
初歩の段階を過ぎると、ますますピアノが楽しくなってきて、「レパートリーを増やしたい!」と思うものです。様々な曲を弾くために、全調でのスケール(音階)とアルペジオ(分散和音)の練習は、この時期に必ずやっておきましょう。
日頃の練習メニューに「身体訓練特化型」の練習曲を加えてみませんか?このタイプの練習曲は、短いパターン練習なので短時間でOK!効率的に技術の練習をして、残りは曲の研究に時間を使えます。
「身体訓練特化型」の練習曲とは?詳しく知りたい方はこちら
「身体訓練特化型」の練習曲ガイド(一覧)はこちら
中級者向けのピアノ練習曲 おすすめ3選

それでは、本題のおすすめ3選です!
①全訳 ハノン ピアノ教本
ハノン(1820~1900年)は、フランスのオルガニスト兼ピアニスト。日本では名前を「ハノン」と発音するのが一般化されてしまいましたが、正しくは「アノン」です。この教則本は、アノンの演奏家としての豊富な体験をもとにして作曲されました。
5本の指が完全に均等化されたならば、ピアノのために書かれたあらゆる曲を弾くことができるだろう。ただ指使いのみが問題となるが、それも、何の苦もなく解決できるだろう。
―Charles-Louis Hanonー 「 ハノンピアノ教本」まえがきより
- 39番の音階練習、41番の三和音の分散練習は必ずやりましょう。今、自分が弾いている曲の調から始めると良いです。時間がかかっても、正しい運指で全調弾けるようにすると、曲を仕上げるのに大幅な時間の節約ができるようになります。努力は報われる!
- 第1部は、指の均等化を図る練習になっています。楽譜の上部に、重点目標となる指番号が提示されているので(例:[3-4」など)、苦手な指の強化につながる曲を選ぶと良いでしょう。なお、ハ長調でしか書かれていないので、できる方は移調して練習するのもおすすめ。
- 3度、6度、オクターブの重音練習、半音階なども大切な練習です。いろいろな調で弾きましょう。
②リトル ピシュナ 48の基礎練習曲集(60の指練習への導入)
ピシュナ(1826年~1896年)はチェコスロバキアのピアニストで、30年間を教師としてモスクワで過ごしました。より高度な練習曲として、「ピシュナ 60の練習曲」がありますが、その導入教材として書かれたものです。
私はハノンを子どものころ使いましたが、大人になってからピシュナの練習曲を使い始め、とても良い効果が得られました。本当に素晴らしい教則本だと思っています。特に、1曲で全調練習できるのが、技術面でもソルフェージュ的にも強みです。
1小節の練習パターンを、どんどん半音上に転調して元の調に戻る、それを同一指使いで通すのはハノンにはない有効な練習方法です。また、左右違うパターンの課題がほとんどなので、ハノンより多声的に聴く能力が育つでしょう。ハノンはすでにお持ちの方が多いと思うので、次の一冊におすすめです!
- 練習する前に、音階の楽典的知識をいれておきましょう!移調するときに役に立ちます。
- 保持音(ある特定の音だけ押さえておく)は、力まず鍵盤に定着させる。保持音でない音を弾いている指との独立を強く意識しましょう。肩、腕の筋肉は緊張させないこと。
- 長時間弾きすぎないようにする。毎日少しづつ、ゆっくりあせらず練習すること。
- 指の訓練より大切なのは、耳の訓練。左右異なった動きをポリフォニックに聞き取ること。
こちらの楽譜は「リトルピシュナ」です。「ピシュナ60の練習曲」は上級者向けの別テキストです。購入の際にはよくご確認くださいね!
③新訂ピアノのテクニック 現代的技術 巨匠たちの提言 /Ernest Van de Velde 著 安川 加寿子 訳編
ハノンとともに有名な教則本です。ショパンのシステムを採用しているところが、この練習曲の素晴らしいところです。訳編の安川 加寿子氏(1922年~1996年)は、幼少期からパリでピアノを学び、ピアニストとして、また教育家として活躍されました。日本に「ヨーロッパの本物の音」を伝え、フランス音楽の楽譜校訂、優れた教則本の訳編など、日本の音楽界に残した功績ははかりしれないものがあります。
ページ下部には「ピアノ巨匠たちの忠言」が書かれていて、これを読むのも楽しいです。練習をさぼりたくなると、この忠言が目に入り、「がんばろう!」と思えます!大人になると、叱咤激励してくれる人が周りにいなくなりがちなので、巨匠からの一言は心に響きます♪
全調スケールも、ちゃんと入っています。こちらはハノンより細かく、スケールを前半と後半にわけたり、予備練習もたくさん入っているので、いきなりハノンの4オクターブスケール練習が難しい人は、この本から始めてみるのも良いでしょう。
音の美しさが際立っていたという安川先生らしく、すべての曲を3種類のタッチ(レガート―マルカート、スタッカート、レガティッシモ)で練習することをすすめています。ていねいに練習をすすめれば、ピアノの演奏に、柔軟さ・円滑さ・音の美しさを得ることができる一冊といえるでしょう。

自己練習で、今でも時々使っています♪ 生徒さんにも好評です。
ショパン―ヴァン ド ヴェルド のシステムを理解して練習することが大切です。
各練習曲を、次の3つの方法で弾きます。
- レガート―マルカート 指を丸くして、鍵盤の奥深くまでしっかり打鍵する。それぞれの音はつながっているが(レガ-ト)、ひとつひとつの音が明瞭(マルカート)である。
- スタッカート pのときは手首で軽く切る。fのときは鋭く突くように弾く。いずれも、腕は固くしないこと。
- レガティッシモ ひとつの指にかけた重みを、次々に他の指に移し替えていくように弾く。次の音を弾くまで、決して前の音を離さない(むしろ少し重なるくらいの意識で)。腕は固くせず、まわすようにして弾く。
3の奏法は、いわゆる「重力奏法」と言われるもので、ロマン派の作品を弾くうえでは、とても大切なテクニックです。美しく歌う音(カンタービレ)をうみだすための技法なので、いろいろな曲に応用できます。
新訂ピアノのテクニック 現代的技術 巨匠たちの提言 /Ernest Van de Velde 著 安川 加寿子 訳編
まとめ
中級者向けのピアノ練習曲おすすめ3選は以上です。
いずれも、正しく使えば必ず効果がでる練習曲ばかりです。是非、いつもピアノの横に置いて、必要な時にご活用ください。