クラシックピアノの世界には、大作曲家が残した素晴らしい「練習曲(エチュード)」があります。
今回の記事では、ショパン、リスト、ドビュッシーの練習曲を紹介します。

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「練習曲(エチュード)」という名の芸術作品
「練習曲」というと機械的な指の訓練を想像しがちですが、本来「エチュード」は研究・探求などの意味も含む言葉です。大作曲家が残したエチュードから、私たちは彼らがピアノ演奏に求めたものを深く知ることができます。
ショパン、リスト、ドビュッシーの練習曲は、素晴らしい芸術作品です。

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ショパン 練習曲
ショパンの練習曲には「作品10」 「作品25」「3つの新練習曲集」の3つがあります。
言わずと知れた、ピアノ練習曲集の最高峰です。ピアニスト、ピアノ学習者にとっては、これらを弾くことで得られるものは本当に大きい!宝物のような練習曲です。
「3つの新練習曲集」
初めてショパンの練習曲を練習する方は、まず「3つの新練習曲集」を弾いてみることをおすすめします。「作品10」「作品25」より、技術的には易しいと思います。
アシュケナージの「ショパン練習曲集」には「3つの新練習曲集」も収録されています。
「12の練習曲 作品10」
「作品10」には、3番<別れの曲>、5番<黒鍵>、12番<革命>などの有名曲があります。
「ポジション奏法」、「指の独立」、「脱力」が出来ていないと、ショパンの練習曲は弾けません。冒頭の作品10の1、10の2はそれを如実に教えてくれます。
高校生の頃は、ポリーニのCDを毎日聴いていました。すみずみまで磨き上げられた、一点のくもりも無い完璧な演奏。少しでも近づきたくて、格闘した日々が懐かしいです…。
ショパン:練習曲集作品10・作品25 [ マウリツィオ・ポリーニ ] 言わずと知れた、歴史的名演。ショパンのエチュードを練習しているなら、必ず持っているべき一枚です。
「12の練習曲 作品25」
「作品25」の練習曲は、1番<エオリアン・ハープ>、9番<蝶々>、11番<木枯らし>などが有名。作品25-2は、作品10と作品25の中で最も取り組みやすい作品のひとつです。「3つの新練習曲集」をやった後に、このあたりから弾いてみると良いでしょう。
ショパン / 練習曲集 マレイ・ペライア 【BLU-SPEC CD 2】最近は、マレイ・ペライアのショパンもお気に入りです。彼の人間味のある温かい音色が、作品25によくマッチしていると思います。
楽譜は、パデレフスキー版とコルトー版を私は持っています。
コルトー版は、練習の仕方がぎっしりと書いてあるので、とても参考になりますよ。すでに楽譜をお持ちの方にも、次の一冊としておすすめします。日本語訳も全音出版から出ています。ただし、「作品10」と「作品25」は別冊で、「3つの新練習曲」は入っていません。
ショパン 12のエチュード コルトー版 /全音楽譜出版社 コルトー版の日本語訳版です。コルトーの、曲を要素に分解し、細かくテクニックを掘り下げていく姿勢には圧倒されてしまいます…!それでも、最後は芸術的本質に立ち返るように、コルトー独特の美しい言葉で教えてくれています。作品10と25は別冊。
パデレフスキー版は、一冊に「作品10」「作品25」「3つの新練習曲」が収められています。
最近、全音出版からエキエル版(ショパンコンクール推奨楽譜)の日本語版が出たようなので、こちらも近々購入予定。日本語で読めるのは、助かりますね。



リスト 練習曲
「12の練習曲 作品1」中級者も弾けます!
リストの練習曲には「3つの演奏会用練習曲」「2つの演奏会用練習曲」「パガニーニによる大練習曲」「超絶技巧練習曲」があります。
そのほか「超絶技巧練習曲」のルーツとなり、14歳の時に書いたと伝えられている「12の練習曲」も出版されており、こちらは中級者でも弾くことができる内容です。
初めてリストを練習する方は、まず弾いてみてはいかがでしょうか?その後、リストがどのように技法を拡大していったか知るうえでも、とても参考になりますよ!
全音ピアノライブラリー リスト 12の練習曲(作品1番) 全音楽譜出版社\n小林秀雄氏の解説がとても詳しく、素晴らしい本です!「超絶技巧練習曲」は無理でも、リストが好きな方は是非弾いてみてください。
「3つの演奏会用練習曲」
「3つの演奏会用練習曲」は1848年に作曲されていますが、1845年にリストはワイマール宮廷楽長になり、華やかな演奏活動からやや距離をとっていました。ワーグナーらと交流し、未来の音楽を模索しながら作曲に力を注いでいたころの作品です。
特に、第3番<ため息>が有名です。リストの練習曲中、「12の練習曲」を除くと、最も弾きやすいのではないでしょうか♪
次に「2つの演奏会用練習曲」を紹介します。リストの練習曲としては最後に書かれたもので、この頃リストは50歳をこえておりました。そのためか、技巧的な表現はおさえられ、洗練された内容の深いものになっています。第1番<森のささやき>、第2番<小人の踊り>ともに最初から標題がつけられ、弟子であったブルックナーに献呈されました。学生のコンクール課題曲などにもよく使われています。
楽譜 リスト集3 ケース入り / 春秋社 一冊で「超絶技巧練習曲」「パガニーニによる大練習曲」「3つの演奏会用練習曲」「2つの演奏会用練習曲」がそろいます!お得です(^^♪
「パガニーニによる大練習曲」
いよいよ、お待ちかね(?)の「パガニーニによる大練習曲」に行きましょう!リストが20歳のころ、ヴァイオリニストのパガニーニの演奏を聴いて、その超人的な技巧と華麗な表現に圧倒され、「私はピアノのパガニーニになる」と言ったとか(あくまでもエピソードのひとつです)。
本作品は、パガニーニに触発され、ピアノの超人的な名手となったリストが、更に自身の演奏法を拡大させようという意欲にあふれています。全6曲からなり、第3番はパガニーニのバイオリン協奏曲第2番、他の5曲は「24のカプリス」をピアノ用に改作しました。
第3番<ラ・カンパネラ>が突出して有名ですが、第6番は、原曲が特に有名な<カプリース24番 主題と変奏>。こちらも、上級者は弾いてみるべき一曲でしょう。
日本人の若手ピアニストが弾く、<ラ・カンパネラ>。彼の手にかかれば、不思議と難曲に聴こえません。今後の活躍にも期待!
「超絶技巧練習曲」
最後に、「超絶技巧練習曲」です。なんとも恐ろしげなタイトル!リストの練習曲中、もっとも名人芸的要素が強い作品で、シューマンは「この曲ばかりはリスト自身の演奏でなければ、その効果は発揮できないだろう」と、当時語ったそうです。難曲の筆頭に、第4番「マゼッパ」が挙げられますが、個人的には、力でねじふせられない第5番「鬼火」のほうが難しい気がします。
リスト:超絶技巧練習曲(全曲) [ 横山幸雄 ]ショパン、ベートーヴェンのソナタの全曲演奏など精力的に活動し続ける横山幸雄氏。若かりし頃のリストも圧巻です!
ドビュッシー 練習曲
「12の練習曲」
ドビュッシーは、死の3年前に「12の練習曲」という素晴らしいエチュードを書きました。
1915年の8月から9月にかけて、驚異的なスピードで書き上げられ、ショパンに献呈されています。曲数もショパンにならってのことでしょう。自らこの曲集のことを「フランス的なテクニックの曲集」と言い、指使いは自分で探し求めるように、とも述べています。
どの曲も難度が高く、それぞれの曲にひとつの特別な課題を割り当てています。
1番「全5指のための チェルニー氏にならって」、2番「3度のための」、3番「4度のための」、4番「6度のための」、5番「オクターブのための」、6番「8本の指のための」、7番「半音階のための」、8番「装飾音のための」、9番「反復音のための」、10番「対比音のための」、11番「アルペッジョのための」、12番「和音のための」と、何やら教科書の目次のようなタイトルをつけていますが、これは彼一流の皮肉とユーモアでしょう。
1番は、チェルニーの名前を出しているのがおもしろい。この曲は本当にチェルニーの練習曲風にはじまるのですが、すぐにドビュッシーの世界になだれこみます。「子どもの領分」の、<グラドス・アド・パルナッスム>に似ているかな。
タイトルは無味乾燥でありながら、ひとつの課題から多彩な音響がひきだされていくのがこの練習曲の魅力です。フランス音楽の素晴らしさを再認識できることでしょう。
ドビュッシーの楽譜は、安川加寿子氏校註の音楽之友社版が一番好きです。
ドビュッシー・メシアンの名演で知られるフランスのピアニスト、ミシェル ベロフ。全集が嬉しい!
まとめ
芸術作品としての「ピアノ練習曲」として、ショパン、リスト、ドビュッシーの作品を紹介しました。
リスト、ドビュッシーも「12の練習曲」を書いているのは、それだけショパンの功績をたたえてのことでしょう。
これらの作品と出会ってピアノが大好きになった方も多いのではないでしょうか?その時の気持ちを大切に、これからも練習していきたいですね!