ピアノ練習曲選びの注意点
今回の記事では、ピアノ練習曲を選ぶときの注意点を解説します。
練習曲を選ぶときに、技術レベルだけで判断するのは失敗のもと。自分に合ったレベルの練習曲を選ぶことはもちろん大切ですが、もうひとつ大事なことがあります。
それは
練習曲の「形態」による分類法を知る
結局使わず「積んであるだけ」の練習曲は、「形態」があなたに合っていなかったのです。
では、具体的にどんな形態の練習曲があるのでしょうか?
早速解説していきます!
練習曲 「形態」と「用途」により4つに分類
練習曲は、形態と用途により、4つのグループに分けることができます。

形態とは、「その練習曲が曲なのか、曲ではないのか」、
用途とは、「その練習曲をどのように使うのか」
こちらの図を見てください。1A、1B、2A、2Bの4つに練習曲を分類しています。

- 1A:曲形式で、自宅練習用のもの→「一般型」
- 1B:曲形式で演奏会用のもの→「芸術作品型」
- 2A:曲ではなく、読譜・奏法についての説明が主のもの→テキスト型
- 2B:曲ではないが、純粋な技術訓練課題が提示→「身体訓練特化型」
あなたにぴったりの練習曲はどのタイプでしょうか?
それぞれの特色、代表的な練習曲、メリット・デメリットなどを詳しく紹介します!
・1A「一般型」は、練習用の”曲”
普通、「練習曲」と聞いてイメージするのは、ほとんどこのタイプだと思います。曲ごとに、ある特定のテクニックを集中的に練習させるよう作曲されています(この曲はオクターブの練習、この曲はスタッカートの練習、というように)。
一応、曲の形態をとっているので、強弱記号、発想記号などはしっかりついていますが、標題(タイトル)はほぼついていません。曲の長さは、初心者向けのものは数小節ですが、中・上級者向けになると数ページにも及びます。発表会・演奏会でとりあげられることはほとんどありません(試験・検定などでは課題となることもある)。
初級者向け
- バイエル教則本
- チェルニー 100番練習曲
- チェルニー リトルピアニスト
中級者向け
- チェルニー30番
- チェルニー40番
- クラーマー=ビューロー
上級者向け
- チェルニー50番練習曲
- チェルニー60番練習曲
- クレメンティ グラドス・アド・パルナッスム
- モシェレス 24の練習曲
「一般型」のメリット
上に挙げた「一般型」の練習曲は、どれも定番中の定番で、長い歴史をもっています。その曲がどんなテクニックの習得を目的としているのか、はっきり理解したうえで練習すれば、効果を実感することができるでしょう。
楽譜は手に入りやすく、適切に指導できる先生も多いです。また、曲形式なので、気に入れば感情移入もしやすく、表現の練習も含めて楽しく練習できるでしょう。
「一般型」のデメリット
「一般型」は、曲形式であるがゆえに1曲が長めです。読譜が苦手な人だと、練習曲を仕上げるだけで結構な負担になり、肝心の曲の練習に手がまわらなくなる可能性も。
また、読譜についての解説がほとんどないので、未経験者には不向きです(バイエルには若干あり)。
どの本も相当なボリュームで、独学の方はどれをチョイスするか判断に迷うかもしれません。
「一般型」の練習曲ガイド一覧もご覧ください。
・1B「芸術作品型」は完全な芸術作品
「芸術作品型」は、「練習曲」という名の芸術作品です。リサイタルプログラム、録音にもよくとりあげられています。
難易度が非常に高いうえ、技術的課題を達成し「その先にあるもの」を磨くための練習曲といってよいかもしれません。上級者にはトライする価値のある作品ばかり。これらの曲を聴くだけでも、必ず得るものがあるはずです。
「芸術作品型」の練習曲については、こちらの記事に詳しく書きましたので、興味のある方は是非お読みください。
「芸術作品型」のメリット
難易度は非常に高いですが、芸術作品の価値を深く感じることができます。練習曲を通して作曲者の書法も学べるので、同じ作曲者の大曲をてがけるときに大きく役立つでしょう(例えば、ショパンのバラードを弾く前にショパンの練習曲を、リストのメフィストワルツを弾く前にリストの練習曲をいくつかやってみる等)。
「芸術作品型」のデメリット

なかなか弾けないこと?
難曲ぞろいです
でもこれは、デメリットとは言いませんね。
上級者向け
- ショパン 12の練習曲集 Op.10 および Op.25
(有名曲:別れの曲 革命 木枯らし など) - リスト 超絶技巧練習曲
(有名曲 鬼火 など ) - リスト パガニーニによる大練習曲
(有名曲 ラ.カンパネラ など)
・2A「テキスト型」は未経験者・独習者でも使えます!
楽譜の読み方、音楽用語の解説などを多く載せているタイプ。指の訓練というよりは、音楽の基礎知識をつけるために使うものです。
テキスト型は、新しいものがどんどん出版されていますので、未経験者はまずこのタイプの教本から始めると無理なく続けられるでしょう。
「テキスト型」のメリット
未経験者でも安心して使えます。読譜・音楽用語・楽典なども、初歩的なものは同時に学ぶことができます。曲は抜粋や、やさしく編曲されたものを少し載せています。初めの一冊には、ベスト。
「テキスト型」のデメリット
テクニックの向上を求めている方には、物足りなく感じるでしょう。ある程度弾けてきたら、1A「一般型」か、次に説明する2B「身体訓練特化型」に移ると良いと思います。
・2B「身体訓練特化型」は忙しい大人におすすめ!
「練習時間はあまりとれないけど、上達したい!」そんな方には、「身体訓練特化型」の練習曲をおすすめします。曲ではありませんが、指、手首、腕などを発達させるために考えられたパターン練習が集められています。純粋に身体訓練に特化させた練習課題ばかりなので、目的をはっきりさせて、集中して練習すれば必ずテクニックは身に付きますよ!
曲練習の前に、その曲に必要とされているテクニックを分析して、予備練習としてこの種の練習曲を使うのがおすすめです。
「身体訓練特化型」のメリット
ひとつの課題が短く、忙しい方でも練習メニューに取り入れやすいです。覚えやすい音型のものが多いので、読譜にも時間がかかりません。自分の苦手な部分を集中的に練習できます。
初心者向けのものからプロも使うものまで、定番の練習曲がいろいろあります。
「身体訓練特化型」のデメリット
「一般型」と同じく、読譜や音楽の基礎事項についての解説はありません。それらは理解していることを前提にいきなり課題が始まりますので、未経験者には不向きです。ある程度「テキスト型」で学習してから使いましょう。
また、曲ではないので無味乾燥な演奏になりがちです。退屈しながらの練習では、注意力が散漫になり、効果が半減します。自分が今何の練習をしているのか、はっきりと意識して使うことが大切です。

効率的に練習できますよ!
まとめ
練習曲の4つの分類を、最後にまとめておきます!
1.「一般型」→読譜に問題がなく、練習時間がある人向き。テクニックのレベルは様々なので、自分にあったものを選びましょう。
2.「芸術作品型」→ピアノ演奏の最高峰を学ぶためのもの。上級者向き。「身体訓練特化型」と併用するのも効果的です。
3.「テキスト型」→未経験者はまずこのタイプで、音楽の基礎を学びましょう。その後、「一般型」か「身体訓練特化型」を使うと効果的です。
4.「身体訓練特化型」→読譜に問題はないが、練習時間がなかなか確保できない方におすすめです。
「一般型」より、目的をしぼって練習できると思います。
練習曲のレベル別おすすめ教材と効果的な使い方については、こちらの記事にまとめました。
あわせてお読みください。



練習曲「形態による4つの分類法」は以上です!
自分に合う練習曲を効果的に使って、ピアノ演奏に磨きをかけていきましょう!